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Date
4 November 2024

UK P&Iクラブ理事会は、シンガポールで開催され、一連の実りある会議を終えた後、2024年11月4日に開催されたメンバー委員会を以て終了しました。

 

2024年保険年度

2024保険年度上半期における当クラブのクレーム費用は、心強いことに近年よりも低下しています。

 

対照的に、これまでのところプールクレームは大変活発で、非常に高額であった2020年や2021年と似たような状況です。最も注目を集めたクレームは米国ボルティモアで発生した「Dali」の事故で、世界中のマスコミで報道され、最終的な損害額について様々な憶測が飛び交っています。このクレームの最終損害額について正確な数字を確定するのは時期尚早ですが、高額になることは明らかです。また、特に汚染、岸壁損傷、船骸撤去など、他にもプールクレームの報告件数が増加しており、最近注目を集めた他の事故も、プールクレームに発展する可能性が高いと思われます。

 

個人消費について近年に見られるようなインフレの急上昇は、クレームでは見られていません。しかしながら、全般的なクレーム請求額のインフレは続いており、環境圧力の影響、さらには社会的インフレによってクレーム費用は引き続き上昇するものと予想されます。

 

大半のクレームが年度の下半期に通知がなされる傾向にあるため、今年度末の保険引受成績には依然として大きな不確実性が残っています。

 

2024年の投資市場は好調に推移しました。上半期時点で、当クラブの投資リターンは通年の予想を上回っており、金融市場に大きな変動がない限り、投資ポートフォリオのリターンはプラスになると予想しています。

 

2025年度契約更新に向け、理事会は6.5%のジェネラル・インクリース(General Increase, 以下「GI」と称する)を決議しました。理事会はGIを設定するにあたり、予想インフレ率に加え、最近のクラブ業績やプール損害額の予想など上述の要因を考慮しました。また、少額クレームのインフレに対応するため、理事会はすべての免責額(最大50,000ドル)の10%増額(最低1,000ドル)を義務付けることに合意しました。

 

また、理事会は勘定未閉鎖保険年度の解除保険料(Release Calls)を以下のとおりとすることにも合意しました。

2022年度:5%、2023年度:7.5%、2024年度:10%、2025年度:15%

 

安全&リスクマネジメント部門

当クラブは2024年初頭に、下記5つの重要な柱に基づいて構成された安全&リスクマネジメント部門をロスプリペンションの枠組として再スタートしました。

- 船隊の品質

- 損害防止

- 業界との連携

- 乗組員のウェルビーイング

- 環境

 

現在行われている取り組みには、次のものがあります。

船隊改善計画

2024年、当クラブは船隊改善計画を導入しました。この計画は、PSCによる拘留やクレームに関する記録の分析を通じて、潜在的に基準を満たさない船舶を特定し対処することを目的として、船主の皆様と協力して適切な是正措置を講じるものです。

「通常業務から学ぶ」トレーニング

当クラブはIOGPガイド642「何も問題がないときに学ぶ方法―通常業務から学ぶためのガイド」の主執筆者である行動心理学の第一人者、マーシン・ナザルク博士と提携しました。この新しい対面式トレーニングコースを通して、どこでどのような事故が起こりうるのかを認識していただくことを目的としています。

緊急対応訓練とリチウムイオン電池

当クラブはReact Emergency Response社およびSimwave B.V.社と提携し、特にリチウムイオン電池のような再生可能エネルギー源による火災リスクに関する乗組員トレーニングを強化しました。この取り組みは、火災のような緊急事態に対処する際に、乗組員の自信を高めることを目的としています。参加者には、実践的シミュレーションや経験豊富なサルベージ専門家から学ぶ機会を設けるなど参加型トレーニングを受けていただくことができます。

業界の課題

当クラブは、引き続きロシア制裁措置の手続きに対応しています。この制裁措置では、ロシア水域を通過する航海ごと、または積替えで価格制限貨物を積載する航海ごとに、(ロシア産原油および石油製品の)価格宣誓書および(当クラブの引受対象船舶の)SPIRE報告書をクラブに提出していただくことがメンバーに義務付けられています。

ロシア発着の貨物に対する英国およびEUの制裁措置により、保険者の義務が強化されています。ロシア向け貿易に関与する船舶のあらゆる形態のP&Iクレームに関する当クラブの社内手続きには、輸送貨物の性質に関する広範な調査が含まれるようになりました。

 

メンバー/ブローカー・サーベイ

メンバーとブローカーを対象としたサーベイを夏に実施しました。本サーベイでは、長期間にわたって状況をモニターできるよう、継続的なサーベイ実施を念頭に入れて調査項目を設定しました。機密保持のため、サーベイは独立した第三者によって実施されました。

調査結果は当クラブにとって励みになる内容で、99%のメンバーとブローカーが当クラブに満足していると回答しました。クラブの顧客推奨度(net promoter score)は54で非常によい結果となっています。また、本サーベイにおいて改善すべき点もいくつか示されました。これらはすでに当クラブの経営戦略に組み込まれています。

 

ウェブサイト

当クラブは今月末に新しいウェブサイトを公開する予定です。詳しくは当クラブの公式ソーシャルメディア・チャンネルにご注目ください。

 

年次総会

2024年11月4日(月)、当クラブの年次総会がシンガポールで開催されました。

監査および承認済みの2024年2月20日終了年度にかかわる財務報告書は承認され採択されました。

Deloitte LLP(ロンドン)が当クラブの監査人に選任されました。

退任されメンバー委員会への再選の意向を示された理事の方全員がメンバー委員会に再選されました。更に、下記の方々も、メンバー委員会に選出されました。 

Shaikh Khaled Ahmad Al-Sabah, KOTC, Kuwait.

Isidore Caroussis, Chios Navigation (Hellas), Greece.

Lou Dongyang, China Merchants Energy Shipping Co., Ltd, China.

Barbara Pickering, Chevron Shipping, USA.

Alexander Slee, Taylor Maritime, Hong Kong.