フィリピン:最高裁、隠蔽を理由に船員の請求を棄却

Philippines Supreme-Court

本船員は、雇用前健康診断(PEME)に合格後、本船へ乗船していました。船員は乗船中に脳卒中で倒れ、本国へ送還されました。船員は会社の指定医(CDP)より診察を受け、適切な治療を受けた後、就労可能と診断されました。

船員はその後、後遺障害7級に該当しており、永久に就労不能というセカンド・メディカル・オピニオンの診断書を根拠とし、労働仲裁人(LA)に障害給付金を請求しました。同診断書によると、船員は2013年より高血圧の既往歴があるにもかかわらず、投薬治療を受けていなかったことが判明しました。会社側は、船員は就労可能と判断されたこと、また、PEMEを受けた際に高血圧を隠していたことを根拠とし、請求の取り下げを依頼しました。
 
労働仲裁人は会社側の主張を支持し、請求を棄却しました。控訴するにあたり、労働関係委員会(NLRC)は労働仲裁人の決定を支持しました。しかし控訴裁判所では、船員の給付金請求を認め、脳卒中は業務に起因するものであるとし、当該船員の医師によるセカンド・メディカル・オピニオンを支持しました。この訴訟は最高裁に持ち込まれ、請求は再び棄却されました。
 
最高裁判所は、船員が隠蔽をしたという会社側の主張に同意しました。船員がPEMEにおいて、過去に高血圧症を経験したか、診断されたか、医師のアドバイスや治療を受けたことがあるか、という質問に対し「NO」 と答えたことは動かぬ事実であり、議論の余地はありません。しかし、セカンド・メディカル・オピニオンで作成された診断書には、2013年より高血圧の既往歴があるにもかかわらず、投薬治療を受けていないことが記されていました。船員は既往歴があったことは認めました。しかし、たとえ既往歴があったとしても、業務によって症状が悪化した場合は障害給付金受給の対象となると主張しました。しかし最高裁では、既往歴の有無ではなく隠匿の事実が争点であり、POEA(フィリピン海外雇用管理局)標準雇用契約に基づく請求は認められないとして、請求は棄却されました。

Pacific Ocean Manning, Inc., 対Group Manpower Services, Ltd., et. v. M.D., G.R. No. 239169, 2023年8月30日 第2審へ持ち越し (DelRosarioLawのAldrich Del Rosario弁護士およびFlorencio Aquino弁護士が本船側の弁護を担当)

UK P&Iクラブは上記概要を作成してくださったリーガルコレスポンデンツ、Del Rosario & Del Rosarioに感謝します。

Jacqueline Tan

Legal Services Manager

Date2024/01/24