回覧 11/24: EU の第14 次対ロシア制裁パッケージ

European flag infront of building

2024 年6 月24 日、 EU 理事会は第14 次対ロシアッケージを採択しました。このパッケージには、ロシアの液化天
然ガス(LNG)部門を対象とした初めての措置、さらなる輸出関連の規制、船舶への制裁、およびEU 企業に対す
る、第三国にあるEU 域外の子会社がEU 制裁を遵守するよう最善の努力を尽くすことの義務付けなどの新たな制
裁回避の防止措置が含まれています。

これらの措置は、(i) EU 規則833/2014 を改正する理事会規則2024/1745 および(ii) EU 規則269/2014 を改正す
る理事会規則2024/1746 に記載されています。

LNG 部門への規制

EU は、EU 域内で消費されないロシア産LNG がEU 域内に持ち込まれたり、EU 域内の港を経由して第三国に輸
送されたりすることを防ぐ目的で、ロシア産LNG(ロシアを原産地とするもの、またはロシアから輸出されたもの)に
対する初めての規制を導入しました。また、2024 年7 月26 日までとそれ以降は毎月、「荷揚げ作業を行う」事業体
に対して、 EU 域内へのロシア産LNG の輸入について、EU 加盟国の所轄当局への報告義務が導入されます。今
後、以下の規制が適用されています:

  • 船舶間貨物移送(STS)、船舶から陸上への荷揚げ、再積荷作業を含む、第三国への積み替え作業を目的と
    したEU 水域内でのロシア産LNG の再積荷作業は禁止されます。2024 年6 月25 日以前に締結された契
    約については、段階的縮小期間が設けられており、2025 年3 月26 日までこの禁止措置が適用されません。
  • 記の禁止措置は、ロシア産LNG のEU 域内への輸入には影響せず、EU を経由して第三国へ再輸出する
    場合にのみ適用されます。
  • LNG 燃料船の燃料補油に必要な再積荷作業は免除されます。EU 加盟国の管轄当局は、他の加盟国にお
    ける積み替えがネルギー供給を確保するために行われるものであることを確認した場合、当該加盟国へのロ
    シア産LNG 輸送に必要な再積荷作業を許可することができます。
  • 船舶が避難場所を探すため、または海上安全を理由とする緊急寄港のため、海上での人命救助のため、人の健康や安全、環境に深刻かつ重大な影響を及ぼす可能性のある事象の緊急的な予防・軽減のため、あるいは自然災害への対応として支援を必要とする場合には、「融資または金融支援」(保険を含む)の提供は免除されます。
  • Arctic LNG2やMurmansk LNGなど、ロシアで建設中のLNGプロジェクトの完成に向けた新規投資や物品、技術、サービスの提供は禁止されます。2024年6月25日以前に締結された契約については、2024年9月26日までの段階的縮小期間が設けられています。この禁止措置は、ロシアのターミナルからのLNGの購入・輸入や、そのようなLNGプロジェクトに提供される金融サービスには影響しません。
  • 相互接続LNGシステムに接続されていないEU域内のLNGターミナルを通じたロシア産LNGの購入、輸入、移動は禁止されます。2024年6月25日以前に締結された契約については、2024年7月26日まではこの禁止措置が適用されません。
  • 上記の禁止行為に関連する技術支援、仲介サービス、融資または(保険を含む)金融支援の直接的または間接的な提供も禁止されます。

制裁回避に対抗するための新たな措置

今回のパッケージでは、以下のような制裁回避防止措置が導入されます:

  • EUの個人および事業体は、第三国にある子会社がEUの制裁を弱体化させる可能性のあるいかなる活動にも参加しないよう、「最善の努力」を行うことが求められます。
    「最善の努力」とは、制限措置の弱体化を防ぐという結果を達成するために適切かつ必要なすべての行動を指します。
    「これらの行動には、例えば、第三国で設立した法人、事業分野なのか、EU事業者が所有もしくは支配する法人、事業体または団体の活動なのかなどのファクターを考慮した上で、リスクを効果的に軽減し管理するための適切な方針、管理や手続きを実施することが含まれる。同時に、最善の努力とは、(EU)事業者の性質、規模、関連する事実状況、特に(EU)域外に設立された法人、事業体または団体に対して実効的支配の程度を考慮して、(EU)事業者にとって実行可能な行動のみと理解すべきである。このような状況には、(EU)事業者が、第三国の法規制など自らが原因ではない理由によって、自らが所有する法人、事業体、団体に対し支配権を行使できない状況も含まれる。」 (EU規則2024/1745の第8条aおよび前文(30))
  • 第三国に軍事物資を販売するEUの事業者は、ロシアへの再輸出のリスクを特定・評価し、そのようなリスクを軽減できるよう、デューデリジェンスの行使方法を導入する必要があります。
  • EUの事業者は、軍事用品の製造に関する工業的ノウハウを第三国の商業パートナーに移転する場合、そのノウハウがロシアへの輸送を意図した物品に使用されないことを保証する契約条項を盛り込む必要があります。

制裁回避を対象とする制裁規則の文言が次のように拡大されました。
「故意に、本規則の禁止事項を回避することを目的または効果とする活動に参加することを禁止する。故意に、その目的または効果を求めずに、その参加がその目的または効果をもたらす可能性があることを認識し、その可能性を受け入れながら、活動に参加することが含まれる。」 と規定されています。(EU規則2024/1745第12条)

金融部門への規制

EUは、ロシア中央銀行が開発した特殊な金融メッセージ転送サービスである System for Transfer of Financial Messages (SPFS)の使用を禁止しました。 EUの事業者は、SPFSまたは同等の金融メッセージ転送サービスに接続することが禁止され、リストに掲げられた特定の事業体と SPFSを使用してロシア国外で取引を行うことも禁止されています。

輸送

EUは輸送に関する以下のような施策を導入しています:

  • 以下の船舶をリストアップする枠組み(附属書 XLII に基づく)。
    (i) ロシアの国防・安全保障分野で使用される物品・技術を輸送する船舶、
    (ii) ロシア産原油または石油製品を非正規で高リスクの海運慣行によって輸出する船舶、
    (iii) ロシアのエネルギー部門を支援する船舶、
    (iv) ウクライナを弱体化させたり、脅かしたりする活動に従事する船舶、
    (v) EUの制裁措置により制限されている商品を輸送する船舶、
    (vi) EU制裁の違反、回避、制裁違反を助長または関与する船舶、
    (vii) (EU規則269/2014に基づく)資産凍結対象者の名義でもしくはその代理で、またはこれら利益のために所有、用船、運航または使用される船舶。

EUは現在までに(附属書XLIIにおいて)27隻の船舶を制裁対象に指定しています。 これらの船舶は、入港禁止、保険、用船、管理、仲介を含むサービス提供の禁止、STS禁止の対象となっています。

  • 制裁を受けた船舶が、避難場所を探すため、あるいは海上安全のため、海上での人命救助のため、人道目的のため、人の健康や安全、環境に深刻かつ重大な影響を及ぼす可能性のある事象の緊急の予防・軽減のため、または自然災害への対応として援助を必要としている場合は、制裁の適用は免除されます。
  • EUはまた、EU内の飛行禁止および陸路による物資輸送の禁止も拡大しました。
  • ウクライナとの戦争においてロシアの軍産複合体を支援しているとして、新たに61の事業体が制裁の対象に指定されました。 これにはSovcomflotand や Volga Dnepr グループが含まれ、貿易制限の回避や、例えばドローン製造用の機密品目の調達やロシアの軍事作戦への物資の提供に関与しているとしています。

輸出入規制

EUは以下のような新たな制裁指定と輸出入規制を導入しました:

  • ロシアの防衛・安全保障分野の技術強化に貢献しうる制限品目のリストが拡大されました。
  • EUは、ロシアの産業能力の強化に貢献する品目(マンガン鉱石やレアアースの化合物を含む化学製品、プラスチック、掘削機械、モニター、電気機器など)の輸出をさらに制限し、また、ロシアにとって大きな収入源となるヘリウムのロシアからの輸入をさらに制限しました。2024年6月25日以前に締結された契約については、物品の性質に応じてさまざまな段階的縮小期間が設けられています。

その他の措置

EU規則2024/1745第5ab条および第11条は、EUの事業者を保護するための枠組みを規定しており、制裁の実施や収用に関わるロシア企業による損害について賠償を請求することができます。また、付属書XLIIIに記載されているロシア企業に対する取引禁止措置の発動、およびEU加盟国の管轄裁判所の司法手続において賠償金を回収するための手続を規定しています。

サハリン2(Сахалин 2)プロジェクトに関して適用免除措置は、日本のエネルギー安全保障上の需要を確保するため、2025年6月28日まで延長されました(EU規則2024/1745詳説(42))。

ロシアが関与する貿易は、現在重大な法規制の対象となっています。適用される制裁措置に違反する貿易について、保険カバーを提供できないことに引き続きご留意いただく必要があります。メンバーの皆様、制裁リスクの高い貿易に関与する前に、関係者、貨物、船舶、その他のサービス・プロバイダーについて、貿易の関係者全員を通じて徹底的なデュー・デリジェンスを実施することをお勧めいたします。最後に、加盟国は、デュー・デリジェンスによる調査および発見事項の記録を保管するようご注意ください。

国際グループのすべてのクラブは同様の回覧を発行しています。

ご不明点およびご質問については、日本支店の担当者までご連絡ください。
詳しい情報は、以下のリンクよりご確認いただけます。

EU Council Press Release

Q&As on the 14th package

Nigel Carden

Chairman

Date2024/07/04