メンバー各位、
要旨
中国における現行の「固形廃棄物環境汚染防止法」(2015 年改正)は、特定の輸入許可証がない限り、固形廃棄物およ び有害廃棄物の輸入、投棄、廃棄を禁止しています。現在、輸入禁止の固形および有害廃棄物、ならびに輸入許可が必 要な廃棄物は、中国の管轄当局発行の廃棄物リストに記載されています(下記ご参照)。中国における固形廃棄物の取 扱認可制度については 2011 年 8 月 1 日から施行されています。
2020 年 1 月 1 日より施行される中国の改正「固形廃棄物環境汚染防止法」は、固形廃棄物の輸入が禁止されている、ま たは適切な輸入許可証がない場合の、固形廃棄物の返還や処分について、運送人と輸入業者に連帯責任を負わせるも のです。違反に対する罰金も大幅に引き上げられます。
中国は、2020 年後半に固形廃棄物の輸入削減を目指しており、2021 年 1 月 1 日以降は、すべての固形廃棄物の輸入が 禁止されますので、メンバーの皆様はご留意ください。またこれにより、同日以降、固形廃棄物の輸入に関する認可制度 は廃止になります。
2020 年改正法
中国における輸入、投棄、廃棄が禁止されている、または輸入許可が必要な固形廃棄物は、2017 年と 2018 年に中国国 務院の管轄当局が発行、改訂した固形廃棄物リストに記載されています。本リストは、下記の通り本回覧に添付されてい ます。
- 添付 I–中国国内への輸入が禁止された固形廃棄物リスト。持ち込み不可のもの。
- 添付 II–輸入制限の下で原材料として使用することができる固形廃棄物リスト。輸入許可があれば輸入制限原材
料として輸入することができるが、2021 年 1 月 1 日以降は輸入が禁止されるもの。
- 添付 III–原材料として使用することができ、輸入制限されていない固形廃棄物リスト。このような固形廃棄物は、 輸入許可があれば輸入は可能だが、2021 年 1 月 1 日以降の輸入は禁止されます。添付 II との違いは、添付 III に記載された固形廃棄物の輸入業者は、「原材料として使用可能な、輸入制限のない固形廃棄物に関する輸
入許可」を取得する必要があります。
- 添付IV–中国への持ち込みがすでに禁止され、今後も引き続き輸入禁止となる有害廃棄物リスト。
Ref: 10/20 2020 年 8 月
アウトライン
- 中国の固形廃棄物環境汚染防止法の改正は 2020 年 9 月 1 日より施行されます。
- 今回の改正は、固形廃棄物の輸入が禁止されている、または適切な輸入許可証がない場合の、固形廃棄物の返還 および処分について、運送人と輸入業者が連帯責任を負うというものです。違反に対する罰金も大幅に引き上げられ ます。
- 2021 年 1 月 1 日以降、すべての固形廃棄物の中国への輸入が禁止されます。
輸入制限は、固形廃棄物の輸入に関する行政措置に基づき、中国において 2011 年 8 月 1 日より施行された許認可制度 の対象となっています。中国への固形廃棄物の輸送を受け入れる前に、運送人は、荷送人に対し、下記の証明書を要求 する必要があります。
(i) 当該固形廃棄物の輸入許可証
(ii) 固形廃棄物輸入に関する荷受人の登録証明書 (iii) 外国固形廃棄物サプライヤーの登録証明書 (iv) 輸入固形廃棄物の船積み前検査証明書
この許認可制度は2020年末まで施行されます。 2021年1月1日以降、すべての固形廃棄物の輸入が禁止されます。 海上輸送により中国へ輸入された固形廃棄物の返還と処分に関する責任を規定する現行法では、輸入が禁止されてい る固形廃棄物の返還や処分の費用について、運送人が輸入業者を特定できない場合、運送人に責任を課していました (2015 年改正法 第 78 条)。今回の改正法では、輸入禁止固形廃棄物を輸入した場合や、輸入禁止固形廃棄物リストに 従った許認可制度の要件を満たしていなかった場合、固形廃棄物の返還と処分について、運送人と輸入業者の双方に連 帯責任が課せられます。
それゆえ、輸入業者が判明している場合であっても、運送人が責任を負わされる可能性があるでしょう。もし運送人と輸入 業者が固形廃棄物の返還を拒否する場合、または 3 か月以内に返還しない場合には、管轄当局は輸入業者や運送人が 廃棄物を返還するよう措置を講じます。返還できない固形廃棄物の場合、または税関が返還しないことを決定した場合に は、その廃棄物は関係当局によって廃棄処分され、運送人と輸入業者が連帯し処分費用についての責任を負うことにな ります。改正法により、本法律に違反した場合の罰金が大幅に引き上げられます。運送人が、禁止固形廃棄物を中国領 域内へ輸入した、または中国領域を経由して有害廃棄物を輸送した場合、本改正法では、運送人と輸入業者に対し 50 万 元(約 71,000 米ドル)から 500 万元(約 710,000 米ドル)の罰金が科せられることが規定されています(第 115 条第 1 項)。 税関当局による固形廃棄物の輸出地への返還が命令された上、さらにこの罰金が科せられることになります。本改正法 は、有害廃棄物以外の固形廃棄物が中国領域内を経由することは禁止していません。運送人が固形廃棄物を中国経由 で輸送する場合、その固形廃棄物(有害廃棄物を除く)が中国の港で荷揚げされないのであれば、運送人は税関へ申告 する必要はないと理解しています。中国の港で荷揚げはするものの中国領域を通過するという場合には、輸入許可が必 要となります。
法律に違反した場合の大幅な罰金の引き上げを考慮に入れ、固形廃棄物の輸送の引き受けの際には、記名式船荷証券 (straight bill of lading)か海上運送状(seaway bill)を発行することを推奨します。さらに、船荷証券や海上運送状に記載さ れた荷受人の名前と前述の輸入許可証や登録証明書上の輸入業者名が一致していることを確認します。それに加え、貨 物について疑わしい点がある場合、特に荷送人が過去に固形廃棄物を中国へ輸送した履歴があると把握した場合は、荷 送人に対し輸入許可証、登録証明書、船積み前検査証明書の提示を求めるだけでなく、もし上記リストに税関コードが記 載されている場合には、その税関コードも要求してください。
もし、禁止固形廃棄物の輸送によって、港での荷揚げ後にその廃棄物に起因する環境汚染が発覚した場合は、追加の罰 金が課せられる可能性があります。その場合、その汚染による直接的な経済的損失と同額か、あるいはその 3 倍の金額 の間で罰金額が算出されます。環境被害が大きく出る性質の事故であるとみなされる場合は、直接的な経済的損失の 3 倍から 5 倍の罰金額が算出されます(第 118 条)。中国の海域内での海上輸送に起因する海洋環境への汚染損害の防 止および管理については、本改正法では規定しておらず(第 2 条)、中国の別の法律によって定められています。
改正法は、輸入された固形廃棄物が、荷送人により誤申告されていた場合でも区別はありません。しかし運送人は、誤申 告により科せられた罰金に対して異議申し立てが可能であるとしています。中国行政処罰法(第 27 条 2 項)では、禁止固 体廃棄物の輸入が軽微な行為とみなされ、また環境汚染を及ぼすことなく、適時に是正措置を行った場合には、行政処 分は科されないとしています。ただし、運送人は依然輸入業者と連帯責任で、当該固形廃棄物の返還と廃棄処分につい ての責任を負います。
中国の領海または水域で事故が発生した場合、船舶の積載貨物、あるいは船体や機械類自体も固形廃棄物として扱わ れ、(「固形廃棄物の識別基準 – 一般規則(GB34330-2017)」に従い)中国法に則った処分が必要となる可能性がありま す。これは、貨物や船舶が受けた損傷により本来の価値を失ったかどうか、および損傷を受けた船舶が二次的に原材料 として使用できるかどうかによります。損傷を受けた貨物が修繕できず、本来の用途での再販売もできない場合、あるい は事故に起因した損傷により船体や機械類が中国国内で解体されて売却される場合には、それらは固形廃棄物とみなさ れる可能性が高く、税関当局の監督のもとで廃棄処分する必要があります。国際グループが得た法的アドバイスによると、 このようなシナリオの取り扱いについては、個々の状況に応じて判断されるだろうと考えられています。
中国海域を航行する際には、固形廃棄物環境汚染防止法の対象となりうるあらゆる活動について、十分な注意が必要で あることにご留意ください。本改正法の施行に向け、税関は貨物の検査や輸入固形廃棄物の検疫を強化するでしょう。密 輸の疑いや、法律違反による罰金を回避するため、中国へのあらゆる種類の廃棄物輸送の引き受けには、相当な注意を 払い、慎重にチェックすることが求められます。
本改正法により課せられる要件に関して疑問がある場合は、クラブ管理者にご相談ください。本回覧には、添付Vおよび VIとして、改正法の英語版と中国語版をご用意しました。
国際グループのすべてのクラブは同様の回覧を発行しています。 UKP&I クラブ 日本支店
お問い合わせは下記へお願いいたします。 Dr. Chao Wu
email: chao.wu@thomasmiller.com