R (ON THE APPLICATION OF KNIGHT) v SECRETARY OF STATE FOR TRANSPORT [2017] EWHC 1722 (Admin)事実原告は、難破船からさまざまな物品を回収したダイバーでした。2018年、彼は東インド会社の船で運んだと思われる9万6千ポンドから120万ポンド程の価値があるとされる大砲を8個回収しました。 2011年には、他の船から11万ポンド前後の価値があると考えられる錫インゴットとその他物品を回収しました。原告は、1995年商船法第236条(「MSA 1995」)に基づいて活動することを義務付けられていましたが、船骸管理人にその物品の回収を通知しませんでした。したがって、(回収された貨物またはその他の物品を船骸管理人に引き渡すことを要求している)MSA 1995の第236条および第237条に反するとして、原告は、2013年に起訴され、有罪判決を受けました。
2014年、原告は大砲とインゴットの引き上げに関する海難救助報酬を要求しましたが、彼の要求は船骸管理人に拒否されました。彼は2015年と2016年にもこの要求を繰り返しましたが、運輸大臣は彼の要求を拒否しました。船骸管理人は、1989年サルベージ条約の第18条に依拠し、海難救助者の違法行為があった場合に、海難救助者の支払額の全部または一部が奪われると規定していると主張しました。船骸管理人は、原告が記載したすべての物品が原告に対する訴追の一部を構成しており、原告への支払は、海難救助報酬の支払いに関する公序良俗に反し、不適切であると述べました。
船骸管理人によれば、MSA 1995の上記規定、特に第236条の根底にある論理的根拠は、「サルベージを略奪から区別する」ことを可能にする、ということでした。原告は司法上の確認請求を行い、行政裁判所は同請求を許可しました。
判決
本件はTeare 判事によって裁定されました。
Teare 判事は、原告の海難救助報酬の申立ては時効であると判断しました。したがって、運輸大臣の海難救助報酬を拒否する判決に対する司法上の確認請求は棄却されました。
サルベージ条約第23条に規定する2年間の請求期限は、「救助活動」が終了した時点から始まります。サルベージ条約は、救助活動が終了する事象を定義していません。 Teare 判事は、救助活動の終了は、その特定の事件の総合的な状況によって決定されるべきであると判断しました。原告は、海底の難破船のサルベージ活動は、海底からすべてが引き揚げられるか、救助者がオペレーションを放棄するまで、終了または完了したとはみなされないと主張しました。商業的なサルベージ活動(例えば、安全な港への曳航)とは対照的に、古くから見られる難破船のサルベージの場合、サルベージ活動が完了するまでに数十年もかかることがあります。
しかし、Teare 判事は、オペレーションを数ヶ月中止することにより、またオペレーションが継続されている形跡が現場無ければ、船骸の救助活動は終了したとすることができると判断しました。同じ船骸に対して、後に潜水作業をする場合には、第2の新しい救助活動が行われたとみなされます。
Teare 判事は、上記の時効の結論にもかかわらず、(傍論として)、原告の申し立てに対して、船骸管理者は、原告が詐欺的行為やその他の不正行為をしているため有罪であると判断する前に、公平な手続きをとっていなかった、とする原告の主張について、付言しました。
Teare 判事は、海難救助条約第18条で言及されている不正行為とは、「実際の救済作業の過程で救助者によって執行された」行為に限定していると明示しました。
この条項は、海難救助者は、以下の2つの状況で、条約に基づく支払いの全部または一部を奪われる、と規定しています。:第1は、救助者の過失によって、救助活動が必要または困難になった場合であり、第2は、救助者が詐欺あるいはその他不正行為をした場合です。
第18条には、救助者の詐欺またはその他不正行為が救助活動中でなければならないという要件はなく、その作業の開始前であっても、終了後であっても構いません。しかし、詐欺やその他不正行為が、救済措置や救済の請求と実際に関連していない限り、第18条を適用する裁判所またはその他の仲裁低は、詐欺またはその他不正行為が関連性があるとみなすことはありえないでしょう。
コメント
本件は、古くからあったタイプの船骸のサルベージに関する珍しいクレームですが、海難救助報酬の請求について海難救助条約に定められた消滅時効に関する、有益なガイダンスを提供しています。 また このケースは、海難救助条約第18条の文脈における「詐欺および不正行為」の解釈に関する有用な指針も提供しています。