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Date
13 March 2019 13/03/2019

WARNER V SCAPA FLOW CHARTERS (Scotland) [2018] UKSC 52

事実

ワーナー氏は、被告の運航する船を、ダイビングをする目的で、2012年8月11日から18日の週、傭船しました。2012年8月14日、ワーナー氏は、ダイビングの際の事故で死亡しました。原告は、その未亡人と2011年11月に生まれた未成年の子供です。請求は、下船がなされるべきであった日として当事者間で争いのない2012年8月18日の2年以上後、また、その後の3年以内の2015年5月14日に、提訴されました。被告は、請求は出訴期限を過ぎている、と反論しました。

運送人の過失により生じた、運送中の旅客への人身損害に関する責任について、英国において適用される法体系は、1974年の海上による旅客及び荷物の運送に関する条約(アテネ条約)です。

アテネ条約第16条は、以下の出訴期限を定めています。

1.旅客の死亡、又は、人身損害から生じた損害賠償請求は、2年の出訴期限 にかかる。
2.運送中の死亡の場合、出訴期限の期間は、その旅客が下船することとなっ
ていた日から、起算する。
3.請求を受けた裁判所の法が、出訴期限の期間の停止、中断の事由を規律する。しかしながら、本条約に基づく訴訟は、下船がなされたであろう時から3年の経過後は、提起できない。
(上記の文字の強調は、著者による。)

本件では、請求を受けた裁判所の法は、スコットランドの法でした。その1973年(スコットランド)出訴制限法の第18条は、「請求者が死亡した者の親族である場合、その親族が未成年であって法的に無能力であった期間は、出訴期限の期間の計算においては無視される。」と規定しています。

上記を前提に、ワーナー夫人は、その未成年の子を代理して提起した訴訟についての出訴期限の期間は、アテネ条約第16条第3項により、最大限、つまり、3年間に拡張される、と主張しました。

第1審において、Ordinary裁判官は、出訴期限に係る主張を認め、2つの請求を共に、却下しました。控訴において、Inner Houseは、ワーナー夫人自身の請求は出訴期限が経過してというOrdinary裁判官の意見を支持しましたが、その子の後見人としての請求については、子を代理してなされた請求は出訴期限にかかっていないとして、第1審の決定を覆しました。

被告は、停止、又は、中断とは、停止事由、又は、中断事由が生じる前に、既に、期間が起算されている場合にのみ、機能するものである、と反論しました。上記1973年法第18条は、出訴期限の期間の開始を延期するものであって、アテネ条約が規定する停止、又は、中断をなすものではない、としました。従って、ワーナー夫人の子の請求も、2年の出訴制限にかかる、と主張しました。

判決

最高裁判所は、被告の上告を退け、ワーナー夫人の子の後見人としての請求は、出訴期限にかかっていない、と判示しました。最高裁は、「出訴期限の期間の停止…の事由」との文言は、期間が開始した後にその時計を止める事由のみならず、期間の開始を延期する国内法をもカバーするために十分、広範な規定である、と判示しました。

コメント

本稿の執筆の時点においては、2年の出訴期限の規定は、イングランド及びウエールズにおいては、アテネ条約に基づき請求を行うすべての原告に適用される強行規定です。しかしながら、弊クラブの理解によれば、英国法には、1980年出訴制限法において、スコットランド法に似た延期を定める規定があります。従って、原告の代理人弁護士が、英国裁判所に提起する同様の請求について、本判決に依拠することが予想されます。

以上

和訳: 田中庸介 (弁護士法人 田中法律事務所 代表社員弁護士)