国際P&Iグループ(IG)は2022/23保険年度の再保険料率を発表しました。 IGウェブサイトにて、本プレスリリース記事をご覧いただけます。
市場環境の悪化と、すでに広く公表されておりますIGのクレーム・レコード悪化を考慮し、2022保険年度の再保険契約の更新にあたり、IGは再保険料の引上げに合意しました。
IGは、超過損害再保険(GXL、1億ドルを超える20億ドルの部分)の2年契約終了に伴い、再保険契約の更新を行いました。 また、オーバースピル・プログラム(21億ドルを超える10億ドル)及び、GXLの第1レイヤー(1億ドルを超える6.5億ドル)をカバーする、3つの10%複数年再保険契約のうち1契約を更新しました。
しかしながら、厳しい再保険市場の環境で、当初、市場には「システミック・リスク(systemic risks)」と総称される、サイバー攻撃やCovid-19、将来のパンデミックについての契約には、懸念がありましたが、IGとしては、加盟各クラブがすべてのリスクについて、追加保険料なしで無制限に複数回回収できる独自の高水準のカバーを提供し続けることができるよう、長年の再保険パートナーを通して、交渉を進めてまいりました。
その目標のため、GXLの契約内容に調整が加えられましたので、以下で詳しく説明いたします。
船種別コスト配分の公平性を確保するために、例年行っている分析の一環として、IG再保険委員会は、現行の船舶カテゴリーを見直しました。検討の結果、船舶の各カテゴリー別の料率が調整されました。この記事の最後で詳細を掲載いたしました。
IG再保険委員会の委員長である、マイク・ホールは以下の通り述べています。
2020年に再保険プログラムの大部分を2年契約として更新したIGの決定は、メンバーに2年間の再保険料の安定と、カバーの継続性というメリットをもたらしました。 しかし反面、その2年の間に起こった市場の悪化、感染症の世界的流行、多くの保険カバーの問題、そしてクレームレコードの悪化などがあいまって、2022年度再保険契約の更新は特に困難となりました。 とはいえ、IGの長年の再保険パートナーは、世界の海運業界をサポートする、IGのカバーの独自性を理解しています。今年の再保険契約の締結に、変わらぬ支援をいただいた再保険パートナーやブローカーの皆様に感謝します。
再保険契約更新の概要
主要部分のGXL(第1~3レイヤー、1億ドルを超える20億ドルの部分)は、4つのレイヤーに分割され、これを超過する部分はオーバースピル再保険契約として更新され、また3つの個別再保険契約も、現状通り維持されました。全体像については、下記のように要約されます。
- 個別再保険契約:1億ドルを超える6.5億ドルの第1レイヤーのうち30%が、現行と同一条件で継続されました。この30%は、GXLプログラムとは別に3つの個別再保険契約でカバーされます。
- 主要な超過再保険契約:この契約は、以下を除くすべてのリスクを、従来のカバー内容と変更なく、追加保険料なしで無制限に複数回にわたり回収ができるという内容で、更新されました。
- サイバー攻撃
- Covid-19
- パンデミック
- その他の契約:オーバースピル再保険契約(21億ドルを超える10億ドル)および追加カバーは、全体的な再保険料率に含まれます。
バミューダに拠点を置く、IGの再保険キャプティブHydraは、IG再保険プログラムの下層部分のリスクを引受けることで、引続きIGをサポートいたします。再保険プログラムの一部を独立した複数年の個別再保険契約を締結するというIGの戦略は、COVID-19やプールクレームの悪化、そして再保険市場におけるカバーの問題によって市場心理が変動した年においても、船主の皆様に、再保険の安定性を提供し続けています。
厳しい市場環境で、可能な限りの広範なカバーを維持する必要性があることから、2022年度の再保険料率は大幅に上昇しました。この点で、IG再保険料率は前年比で平均33%上昇しましたが、この新料率は 2014/15年のものと近いといえます。
各P&Iクラブのリテンションと超過損害再保険(GXL)
2022/23保険年度の各クラブのリスク保有限度額(リテンション)は1,000万ドルと変更ありません。またプールの構成やGXLのアタッチメントポイントも同様です。
再保険契約のしくみ
現在の3つの個別複数年再保険(1億ドルを超える6.5億ドル部分の30%)のうちの1契約は、2022保険年度で更新が予定されていました。この契約の更新は、契約内容には変更なく既存のマーケットで、早い段階で確定されました。 残りの2つの個別契約は、それぞれ少なくともあと1年間の保険期間があります。
第1レイヤーの残りの70%と、第2、第3レイヤーは現行の2年契約が終了するため、再保険市場で、次のように変更が交渉されました。
- 現行の第1レイヤー(1億ドルを超える6.5億ドル)は、新しい第1レイヤー(1億ドルを超える4.5億ドル)と新しい第2レイヤー(5.5億ドルを超える2億ドル)に分割されました。
- 上記第1レイヤーの70%のうち1億ドルの免責部分(AAD:Annual Aggregate Deductible)についても、引き続きIGキャプティブの Hydraが再保険を引受けることに変更はありません。
- 新設の第2レイヤーを超過する部分、つまり7.5億ドルを超える7.5億ドルの部分は第3レイヤー、15億ドルを超える6億ドル分は第4レイヤーとなります。 これら2つのレイヤーは再保険市場で100%契約されます。
21億ドルを超える10億ドル分をカバーするオーバースピル再保険については変更はありません。
上記の概要で述べたように、今回終了するGXLの契約開始から2年の間に、再保険者は、サイバー攻撃やCovid-19および新たなパンデミックに関して再保険市場全体でカバーに制限を導入していました。IGは、2022年度のGXLでは、以下の通り、かなりのカバーを確保しました。
- 新しい第1レイヤーは、2022年の補償内容を変更せずに導入されたため、サイバー攻撃、Covid-19、およびパンデミックによる損失を含む、すべての損失に対して、1船舶あたり最大5.5億ドルまで、追加保険料なしでかつ無制限で複数回回収できる再保険を適用します。
- 第2~4レイヤーでは、すべての損失を追加保険料なしでかつ無制限で複数回回収できる再保険を適用します。しかしサイバー攻撃、Covid-19、およびパンデミックから生じたクレームについては、各レイヤーごとに年間累積回収限度額を設けており、第2~4レイヤーの年間限度額は総額21.5億ドルです。
- 概要で述べた通り、IG加盟クラブは、GXLから回収できる年間累積回収金額の限度額を超える部分の損失をプールすることに同意しましたので、メンバーの補償範囲に変更はありません。
ハイドラ再保険
ハイドラは、引続きIG再保険プログラムの中のプール・レイヤーでのカバーを提供します。また、GXLの第1レイヤーの70%において1億ドルの年間累積免責金額(AAD)を引受けます。
MLCカバー
海上労働条約(MLC)にかかわる市場再保険は2022年度も競争力のあるコストで更新され、船主の皆様の再保険料率に含まれます。
P&I戦争危険特別担保
P&I戦争危険特別担保についても、2022年度の12か月間について再保険契約が更新されました。 これも全体の再保険料率に含まれます。
2022/23年 超過損害再保険の仕組み
下記の図は、2022/23年のGXLプログラムのレイヤーと仕組みを示しています。
2022/23年の再保険コストの配分
再保険料率の見直しに加えて、例年行っている分析の一環として、IG再保険委員会(RIC)は、前述のとおり船舶カテゴリーを見直しました。
RICは、船舶のカテゴリー数を変更することはないが、過去の保険成績に応じた再保険料率の調整が必要であると結論付けました。
2022保険年度の再保険料率は下記の通り:-
上記の通り、厳しいマーケットの状況下においても、IGとそのメンバー船主にとって、納得のいく再保険契約の更新となったと考えております。
国際グループ再保険小委員会チェアマン
マイク・ホール
2021年12月21日