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Navigating Latin America - An Update on Carriage of Goods by Sea
Rafael Diaz-Oquendo (RAD)
Rafael Diaz-Oquendo (RAD)
Regional Manager (Latin Americas)
Date
3 May 2023 03/05/2023

ブラジル電子B/L「CT-e」と複雑な税関規則における貨物の引き渡しについて

ラテンアメリカとカリブ海沿岸の地域は、UK P&I クラブにとって目を離せない地域の一つです。多くの船舶を当クラブに登録し、この地域を主要な事業拠点としているメンバーもいます。また、事業拠点が世界中のどこであっても、多くの加入船舶が頻繁にラテンアメリカやカリブ海の港に寄港しています。

同地域のクレーム管理は複雑な場合が多くあります。メンバーとクラブは、この地域で話されている複数の言語(スペイン語、ポルトガル語、英語、オランダ語、フランス語)や、ほとんどの国が民法制度に従っているにもかかわらず多く存在する法制度、また異なる文化における商慣習に対応する必要があります。その上、ラテンアメリカおよびカリブ海地域を出発地/目的地とする最も一般的な貿易に関連するクレームの処理には、通常、ある程度の専門的知識が必要となります。この地域で用船者メンバーが増えていることは言うまでもありませんが、タンカー、ドライバルク(沿岸・内航及び外航)、CA貯蔵コンテナといった貿易は、当クラブにおける日常業務の一つになっています。これらの貿易はいずれも、税関検査による罰金、違法麻薬の密輸、貨物クレーム、岸壁損傷、固定あるいはフローティング設備における損害賠償請求(FFOクレーム)、制裁関連の状況等が絡み合い、複雑な補償と法的問題を含むクレームが起こりえます。 

当クラブでは、中米、南米、カリブ海で発生した事案については、ニュージャージーオフィスから、メキシコで発生した事案についてはサンフランシスコオフィスからクレームを管理し、この魅力的にして複雑な地域でクレームを効果的にハンドリングするためにふさわしいスキルと資格を備えたスタッフを揃えています。

本記事では、その中でもブラジルを取り上げて、クラブメンバーから多く寄せられた質問についてお答えしていきます。ただし、ここに記載しているコメントや意見は最終的なものではありませんので、メンバーの皆様には、個別の事案については当クラブにご照会いただくことをお勧めいたします。

ブラジルにおけるUK P&Iクラブ

ブラジルの船主コミュニティは、75年以上にわたってUKP&Iクラブの発展に大きく寄与してきました。最初のブラジル船主メンバーであるCompnhia Comercio e Navegacao(CCN)は、1948年からクラブの記録に残されています。1983年、UK P&Iクラブは光栄なことに初めてブラジル人理事を理事会に選出し、それ以来、ブラジルの主要な海運経営者をほぼ継続的に理事会に選出しています。また、当クラブは昨年、Transpetro-Petrobras Transporte S.A.との70年のパートナーシップを祝いました。

 

ブラジルは世界有数の海運の中心地ですが、この地域との貿易は、現地に拠点を置くメンバーやブラジル外のメンバーにとって、ブラジルに寄港する内航船や外国籍船に、独特な難問をもたらします。そこで、当クラブでは、ブラジルの海運の現状を分析し、円滑な航海を支援するために役立つ情報提供を行っています。

ブラジルの電子B/L’CT-e’:ブラジル沿岸での海上輸送に関する最新情報

当クラブでは、ブラジルを出発地/目的地とする貿易、またブラジル国内での貿易特有の様々な種類の問題に対処しており、また現在も取り組んでいる最中です。そこで今回は、ブラジル海域におけるカボタージュまたブラジル沿岸での物品輸送におけるブラジルの電子B/L (ポルトガル語でCT-e)を取り上げ、実際にハンドリングした事例をもとにした当クラブ独自の知見とP&Iカバーの適用、現地弁護士から得たブラジル法に関する情報をご紹介いたします。なお、ここでご紹介する情報の多くは、2021年11月に開催いたしました当クラブの下記ウェビナーからの引用になります。
"ビデオ紹介:ブラジルにおけるP&Iについてのウェビナー"(https://www.ukpandi.com/ja/news-and-resources/videos/navigating-latin-america-pi-focus-on-brazil/)

 

船主や用船者メンバーから多く寄せられる質問の一つが、沿岸輸送における独自の電子B/L制度、CT-e についてです。この制度は、ブラジルでのカボタージュ運送において全ての海上運送オペレーターに義務付けられています。しかし、このブラジル特有の制度に馴染みがない船主や用船者の多くは、クラブカバーに支障をきたすのではないかと疑問を持ってきました。

  • ブラジル電子B/L、CT-eの利用はクラブメンバーのP&Iカバーを毀損するでしょうか?
  • クラブは同システムを承認しているのでしょうか?

 

CT-e 文書は権原証券ではなく、電子式の記名式非流通船荷証券になります。そのため、P&Iカバーが毀損されることはありません。ブラジル電子B/L、CT-e制度は2013年から運用されており、国際P&Iグループ(IG)に非流通船荷証券として認証されています。

  • CT-eはIG認証の電子B/Lシステムに含まれていませんが、クラブカバーにあたって問題はないのでしょうか?

 

CT-eは権原証券原本ではないため、IGグループにとって承認が必要と考えられるものではありません。

  • クラブではCT-eが使用されたことによって発生した誤渡クレームの事例はあるのでしょうか?

 

CT-eを利用したことから発生した誤渡について運送人の法的責任はありません。一方で、船荷証券原本にのっとって貨物の紛失や損害、不足といった、船主又は運送人に対する通常のクレームは起こりえます。CT-e利用時でもこういった貨物クレームが発生した場合のメンバーの責任はクラブのP&Iカバー対象のままです。

  • クラブルール上、メンバーはへーグヴィスビールールと同等以上の条件での運送契約が必要となります。CT-eによる貨物運送において、へーグヴィスビールールを適用していないブラジルの裁判所での請求となるために、P&Iカバーに毀損が生じるのではないかと懸念されているメンバーもいることでしょう。では、ブラジルにおけるカボタージュに強制的に適用されるCT-eは海上運送におけるP&Iカバーに実際に影響があるのでしょうか?

 

ブラジルが貨物の損失や損害における運送人の責任を規定する国際条約、ヘーグルールやヘーグヴィスビールールまたはハンブルグルールを規定しておらず、基本的に同国内の裁判所ではこれらの国際条約の規定を認めていないことは事実です。しかし、ブラジル裁判所がヘーグヴィスビールールを認めていないとしても、メンバーはブラジル法の下で発生する貨物の滅失、損害あるいはショーテージに係る全ての被保険者責任についてクラブカバーを受けることができます。メンバーの定期運送契約やその他の運送契約上にヘーグヴィスビールールが含まれていることさえ明示されていればクラブカバーとなるのです。もし裁判所がこれらの契約条項を無視したとしても、メンバーはクラブのカバーを受けられます。もしもクラブカバーについてご懸念や疑問がある場合には、B/L、或いはその他契約書を添えてクラブへお気軽にお問い合わせください。内容を確認のうえ、回答いたします。

ラテンアメリカの多くの国の管轄区域は複雑な税関制度と規則を有しています。ブラジルも例外ではありません。これからの国々の多くでは、関税に関連する事案は、税関規則における違反についての行政調査に限らず、犯罪捜査が伴う可能性があります。複雑な税関規則による、ブラジルでの貨物引渡特有の強制的な方法に関して、P&Iカバーに疑問を持つこともあるでしょう。

  • B/L原本なしでの貨物引渡は、誤渡しクレームなど保険カバーに毀損を生じさせる最もよくあるケースです。しかし、複雑な税関規則上、ブラジルでの貨物引渡においては船荷証券原本の提示なしでの取引がよくみられます。

 

ブラジルと貿易する運送は、一般的には、特に規制システムに慣れていないと、貨物の引渡と引き換えに本来の流通証券の譲渡を予想することでしょう。しかし、ブラジルでは法的要件と貨物引渡のシステムは世界の一般的慣習とは全く異なります。ブラジルの規則上、運送人或いは船長は、流通証券原本の提示無しに貨物を現地の保税倉庫に届けることが義務付けられています。流通証券の原本は指定された第三者の税関代理店によって適用される関税の支払いとともに回収されます。それをもって税関代理店は保税倉庫からの貨物引き取りを許可されます。  

  • 当クラブではこのブラジル特有のシステムをどのように取り扱ってきたのでしょうか?

 

ブラジル法において、船長には流通証券原本の提示を要求する法的権利が認められていないため、船荷証券の原本の提示無しに船長が保税倉庫へ貨物を引き渡したとしても、P&Iカバーが毀損されることはありません。

  • 他の管轄区域では、船荷証券の原本の提示無しに貨物を引き渡すとカバーが毀損するため、船主は用船者へ補償状(LOI)の差し入れを要求することがあります。ブラジルでも船主はこのように対応すべきでしょうか?

 

船荷証券原本無しでの保税倉庫への貨物の引き渡しに当たって、船主は用船者にLOIを要求できますが、ブラジルの法制度に精通している経験豊富な用船者である場合は、船長が保税倉庫に貨物を引き渡すしかないことを理解しているでしょうから、LOIの差し入れは拒否されるでしょう。

最後に、ラテンアメリカチーム(https://www.ukpandi.com/news-and-resources/americas/latin-america-team/)はブラジル積みまたはブラジル揚げやブラジル国内での売買取引に関する一般的な問題について、メンバーの皆様からの問い合わせにお応えしています。また、当クラブのロスプリベンション部門(https://www.ukpandi.com/loss-prevention/)においても同様に、メンバーの皆様を支援するため各種情報を提供しています。