税関関連の事案が発生する要因とは?
ラテンアメリカの多くの国では複雑な税関制度と規則を有しています。通常、税関関連の事案は、寄港した船舶に積載された貨物の申告ミスに起因しています。申告ミスは、通関書類(例えば積荷目録)、また、船荷証券(B/L)や海上運送状(Seaway Bill)など関連する輸送書類で発生する可能性があります。
税関関連の事案により、クラブのメンバーはどのような結果に直面する可能性があるでしょうか?
税関関連の事案は、ラテンアメリカのほとんどの国において、税関規制違反に対する行政調査だけでなく、犯罪捜査も伴う可能性があります。
ラテンアメリカにおける税関規制違反の行政調査の大半は、関連する管轄区域内で、メンバーまたはメンバーの代理人に罰金(過怠金)が課される結果につながる可能性があります。税関の行政調査による罰金は、船上の貨物の申告を完全に怠った場合、または不正確な申告(貨物の不足または過剰陸揚げ)により生じる場合があります。この罰金額は通常、貨物の価値の倍数に基づいており、加重要因があるかどうかによっても異なるため、罰金が多額になる可能性があります。さらに、メンバーまたはその代理人が船上の貨物を正確に申告していれば、メンバーまたはその代理人が支払うはずだった税金を加算することにより、罰金額が増額される場合もあります。
当クラブは、以下に対するカバーを提供しています:(保険約款 第2章、第22項B 参照 https://www.ukpandi.com/media/files/uk-club-rulebook2024-japanese.pdf):
- 貨物の不足、過剰陸揚げ、または過剰渡しに対する過怠金;
- 貨物の申告に関する規則の遵守違反による過怠金; または
- 貨物に関連する加入船舶の書類に関する規則の遵守違反による過怠金。(貨物の密輸、またはそれらの試みから生じる過怠金や罰金を除く)
税関は、場合によっては、税関規則違反を密輸とみなすことがあります。
密輸
ラテンアメリカのほとんどの管轄区域内において、加入船舶に積載された物品の種類及び事件の状況に応じて、税関関連の事案から刑事事件に発展する可能性があります。船内に持ち込まれた物品の申告漏れは、密輸とみなされる可能性があり、そのような場合、犯罪捜査が行われる可能性があります。刑事捜査では、誰が密輸に実際に関与したのか、また、そのような人物が犯罪行為に必要な意図を持っていたかどうかが判明します。
ラテンアメリカの港で不注意に麻薬を密輸すると、非常に深刻な結果をもたらす可能性があり、その結果には、無実であっても、船舶の長期拘留や乗組員の逮捕につながる可能性があります。
UBC Savannah号の船長が、船内で違法な麻薬が発見された後、正式な起訴もなくメキシコで長期拘留されたことを受け、国際グループの全P&Iクラブ、国際海運会議所(ICS)、BIMCO、InterManagerは、メキシコでの船舶拘留と乗組員逮捕に関する通達を発表しました。同通達は、メキシコ連邦刑事訴訟法(Mexican Federal Code of Criminal Procedure)においては、麻薬関連犯罪で訴追された者は、たとえ無実であっても、公判前および公判中は刑務所に拘留されなければならないとしていることに関し、メンバーに注意喚起をしています。サーキュラー6/20はこちら
長年にわたり、当クラブでは、組み立てられた家具の内部、果物、砂糖、肉などの冷凍食品、さらには船底部分などで、さまざまな形で麻薬が隠匿されている事例を数多く目にしてきました。麻薬密輸事件の捜査は、輸送チェーンの中のどの人物も麻薬を船に持ち込んだ可能性もあるため、通常、事実を徹底的に調べます。
ほとんどの地方税関当局は、麻薬密輸事件を船上の商品申告の完全な不履行として扱い、税関の行政調査を開始します。さらに、ほとんどの港長は、海事調査を開始しますが、これは通常、同様に開始される刑事捜査を補完するものとなります。地元当局による合法的な努力はすべて、関連する管轄区域内で適用される法的原則とともに、麻薬密輸事件に巻き込まれた不幸な船舶に長く複雑な影響をもたらす可能性があります。
船舶の拘留によって高額の費用が発生する事態を避けるため、麻薬の密輸を防止する対策を講じることを強くお勧めします(Signum Servicesの出版物はをこちらご参照ください (https://www.ukpandi.com/ja/news-and-resources/articles/2021/measures-to-prevent-the-smuggling-of-cocaine/)).
クレームハンドリングに関する推奨事項
密輸に起因する罰金は、当クラブがカバーするものではありませんが、当クラブ米州チームは、米州事務所の麻薬密輸事故の経験に基づき、クレームハンドリングに関するいくつかの一般的な推奨事項をまとめました:
- 事案に関する費用を関係者のどちらが最初に負担しなければならないかを判断するため、関連する定期用船契約および/または関連するスロット用船契約の条件に特に注意を払います。
- メンバーが実際に捜査の対象となる場合には、弁護士を選任し、利害の衝突を避け、弁護士と依頼人の秘匿特権を守るために、関係するすべての利害関係者がすべての局面(刑事、海事、民事)に関して別々に行動すべきかどうかを検討します。事件に関する調査の後の段階で、すべての利害関係を一致させることが可能な場合もあります。
- 弁護士と依頼人の秘匿特権を守るため、通信の配布先リストについて合意します。
最後になりますが、当クラブ米州チームは、ラテンアメリカおよびカリブ海諸国における税関関連事案に関して、メンバーからのいかなる質問にもお答えします。また、当クラブ米州チームは、これらのタイプの事案を防ぐために、良質な情報を提供しメンバーを支援する、当クラブの安全&リスクマネジメント部門 (Safety & Risk Management | Products & Services | UK P&I Club (ukpandi.com)) に連絡を取ることをお勧めします。