船舶が西アフリカの港の沖合に停泊している際、国際通貨や船の備品と引き換えに農産物を販売しようとする漁船や漁師等より目をつけられることは珍しくありません。単に寄付を求められることもあります。
最近の事例により、密輸の告発、刑事訴訟、法外な罰金のリスクを軽減するため、警戒を強め、積極的な対策を講じる必要性が浮き彫りになっています。
ケーススタディ - 7キロのエビに8700万ユーロ
最近の事例では、ロメにてSTSで荷揚げを行うため順番待ちをしていたUKクラブ加入船に地元の漁船が接近してきました。漁師たちは、その日獲れた新鮮なエビを乗組員に差し出しました。約7キロのエビは、乗組員が個人的に使用した小さなスクラップ品と交換されました。
この出来事は、不幸にも本船と船長がトーゴの関税法に基づく「船舶による密輸」の罪に問われるという事態を招いてしまいました。その結果、本船は拘留され、ロメ停泊地からの出港は許可されませんでした。当該メンバーは刑事訴訟、船長と乗組員は1年から3年の禁固刑、さらに密輸に対して8,700万ユーロの罰金が科されるというリスクに直面しました。
この巨額な罰金は、密輸容疑に関与したとされる資産の時価の最大4倍の罰金を認める現地法に基づくもので、この資産の中には交換品、対象となる漁船、そして最も額を占めるものとして船舶の市場価額も含まれます。
当局の関税法の解釈には疑義があったにもかかわらず、クレームを完全に拒否することはできませんでした。 船主は当局との交渉期間中、船舶が拘留されたままであったため、多大な費用と用船料の損失を被りましたが、当初のクレーム額よりもはるかに低い金額で和解を成立させることができました。
UK P&Iクラブは、同様の申し立てにより、ロメの関税当局によって船舶が拘留され、莫大な罰金が課された事例を、少なくとも他に2件把握しています。乗組員は、船舶に近づく業者から食品やその他の物品を購入する潜在的なリスクに注意を払う必要があります。しかし、万一最悪の事態が発生した場合、積極的かつ慎重にクレームを処理することが非常に重要です。早い段階からクラブにご連絡いただき、実際に経験を積んだハンドラーより、事実に即したガイダンスを受けることで、クレーム処理に大きな違いが生まれます。
推奨される防止策
密輸疑惑のケースは重大な課題をもたらしますが、積極的な管理と確立された手順の遵守は、リスクを軽減し、潜在的な損失を最小限に抑えることに役立ちます。今後も、密輸疑惑の件数が増加し、損失が増加する可能性があるため、以下を推奨いたします:
- 特にリスクの高い港や地域では、警戒と注意を強化し、無許可の船舶(またはその乗組員)とのいかなる接触も控えること。
- 船舶への立ち入りを制限し、周辺を注意深く監視すること。
- ベストマネジメントプラクティス BMP-West Africaを参照すること。
- UK P&IクラブのクレームエグゼクティブやSafety and Risk Management担当者のガイダンスを求めること。