概要 / 背景
2001年の燃料油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約(「バンカー条約」)は、2001年3月に採択されました。本条約は船舶からの燃料油の流出又は排出による汚染損害を被った者に対して適正で迅速かつ効果的な賠償をすることを目的として制定されました。
日本国政府は、2020年7月1日、バンカー条約への加入書を寄託し、これにより2020年10月1日から効力発生することになりました。
船主の責任
船主は燃料油流出または排出による汚染損害に対して責任を負います。バンカー条約は燃料油汚染損害についてのみ適用されますが、燃料油染損害は次の通り定義されます:
- A) 燃料油流出または排出により生じた船外の損害で、その流出または排出の発生場所を問わない。ただし、環境汚染の補償については、かかる環境汚染よる逸失利益を除き、復旧のために実際に要した、または要する合理的な措置に係る費用に限定される;および
- B) 予防的措置の費用および予防的措置によって生じた損害
船主が下記を立証した場合は、燃料油汚染損害にいついて船主は責任を負いません:
- 損害発生が、戦争、敵対行為、内乱、暴動、または例外的、不可避的かつ不可抗力的な性格を有する自然現象による場合、または
- 損害発生が、専ら損害をもたらすことを意図した第三者の恣意的な行為または不作為による場合、または
- 損害発生が、専ら灯台その他の航行支援施設の維持に責任を有する政府または当局の過失または不法行為による場合
適用範囲
バンカー条約は、条約締結国の領海および排他的経済水域を含む領域において、発生した燃料油汚染損害に適用されます。また損害を防止もしくは軽減するために取った予防的措置は、その措置を取った場所に拘らず、適用されます。
強制保険または金銭的保証
バンカー条約は、「1969年油濁損害に対する民事責任に関する国際条約」をモデルにしています。バンカー条約は、「直接行動」を強制しており、油濁損害の補償を保険会社に直接請求することができます。
1,000GT超の船舶は、保険付保またはその他の金銭的保証によって、登録船主の油濁損害に対する責任に関して国内法または国際法に基づく責任限度額(「1976年の海事債権についての責任の制限に関する条約」の範囲内において)まで担保する必要があります。締結国の発行する証明書は常時船内に掲示する必要があります。
国際P&Iグループは、バンカー条約に関する所定の「ブルー・カード」を発行することに合意して、それをもとに締結国が「バンカー条約証明書」を発行できることになっております。締結国を旗国とする船舶は、その締結国の証明書を取得すれば良いことになります。
条約締結国以外の国を旗国する船舶の船主は、船舶が航行予定の港湾やオフショシア施設を保有する締結国、またはその他の好意的な締結国からバンカー条約証明書を取得することができます。
条約締結国以外を旗国とする船舶の船主は、当クラブへ連絡して、どの締結国へ「ブルー・カード」を提示すべきかについて、照会ならびに相談を受けることをお勧めいたします。