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Date
15 November 2021 15/11/2021

動画はUKクラブ Vimeoページからもご覧いただけます。

 

 

船種: 

バルクキャリア

事故の概要

第三者サーベイ中に、サーベイヤーが非常用消火ポンプの試験を依頼し、チーフエンジニアが、その準備及び対応にあたった。非常用消火ポンプは、操舵機室内の3メートル程の深さのウエル部に設置されており、傾斜階段でアクセスするようになっていた。試験開始にあたりサーベイヤーは、船首と船尾の甲板上に設置した消火ホースを確認する前に、消火ポンプの現場スタートと運転を確認したいと要請した。消火ポンプ室に降りた直後、チーフエンジニアは急遽サーベイヤーに外に出るよう命じたが、操舵機室デッキに戻った時には、ふたりは眩暈症状を覚え、チーフエンジニアは昏倒寸前の状態であった。 彼らは他の乗組員によって上甲板の新鮮な空気の中に運ばれ、その後すぐに回復した。

分析

本件の原因調査によると、操舵機室デッキに設置された食糧庫用冷凍機械装置が、最近メンテナンスされていたことが分かった。

このメンテナンス作業中に、冷凍機から操舵機室の中にフロン冷媒ガスが放出され、フロンガスは空気より重いため、呼吸に必要な空気を押しのけ、ポンプ室の中に入り込んだと思われる。二人は無事にその場を脱出することができ、非常に幸運であった。もしよくあるように、斜め型でなく垂直梯子であったならば、彼らは脱出する前に倒れていたかもしれない。おそらく、チーフエンジニアはサーベイヤーよりも身長が低かったため、より高濃度のガスを吸い込んで影響を受けたと考えられる。

事故の教訓

  • 不適切なメンテナンスは人命にかかわる。 冷媒ガスが含まれ、偶発的に放出された場合には、当該区域と隣接区域を点検し、完全に換気する必要がある。
  • 本件は、フロンが充填された冷凍設備が関わるが故の特殊な事故ではない。 船舶管理者は、乗組員がこのような危険を十分に認識するよう、しっかりと対応すべきである。
  • 冷凍機が操舵機室または他の閉ざされた区域に設置されている場合、その区域が入域前の予防措置および酸素濃度チェックを必要とする「閉鎖区域」として扱われるべきかどうかを判断するために、リスクアセスメントを実施するべきである。
  • このタイプの消火ポンプ室では、区画の底部から換気可能なメカニカル換気装置を設置する必要があり、また、設置されているのであれば、入域前に必ず換気装置が動いていることを確かめるべきである。