FAQ - ホールド準備と洗浄

Webinar 12 LinkedIn banner image

ホールド準備と洗浄度が重要なのは何故か?

ホールド準備はばら積み船運航の中でおそらく最も重要な部分でしょう。もし、それが適切に行われないと、重大なカーゴクレーム、遅延、追加洗浄、検査費用、さらには オフハイヤー紛争に発展し得ます。

ホールド検査が不合格となる潜在的理由

船舶がホールド洗浄検査で合格しない理由はいくらでも考えられますが、例えば;過剰な錆もしくはペイント剥離;前荷の残滓;ペイントや化学物質の匂いや汚れ;感染もしくは湿気、が挙げられます。

ホールド準備

ホールドを準備する際、船長は次の点(網羅的ではありませんが)を考慮する必要があります:

  • 航海指示書と傭船契約を入念に読み返して、本船の船舶管理会社や傭船者と協議すること。船長は、洗浄度の要請レベルが傭船契約や航海指示書と齟齬があるときは、それを明確にすべきです。
  • 本船に十分な機材が揃っていること:

a) 化学物質や薬剤;

b) ホース、ブルーム、伸縮性ポール及びスクレーパー;

c) 巻き上げウィンチ及び廃物用ドラム缶

  • 今日、最も良く管理されたばら積み船なら、コンビ・ガンもしくはその類似器具を装備して、船倉区画の上部に届く、十分な圧力で貨物残滓や浮き錆・ペイントを除去することができる筈です。
  • ホールドクリーニングのために港と港の間の要する時間:航海中の天候、乗組員の労働時間、休憩規制
  • 洗浄用水と貨物残滓に関するMARPOL規則の考慮
  • ホールドクリーニングと保守作業に関する十分な記録と写真付きレポートを保持することが重要です。
  • カーゴクレーム発生時は、十分な記録と日誌によって、船主の相当注意を証明することに役立ちます。

洗浄度で分類した貨物の例

貨物の種類に関しては、洗浄度により、一般的に3つに類型化することができます。

クリーンカーゴ、例えばソーダ灰やミネラルサンドは、汚染のどのような形態からも、潜在的に損傷する可能性があります。この種の貨物は、積載する前に船倉区画を「ホスピタルクリーン」の状態にする必要があります。

穀物、肥料、セメント等の貨物は、一般的に「中程度にクリーンな、又は中程度にダーティーなカーゴ」と見なされていて、ホールドを「グレインクリーン」水準の洗浄度にすることが通常求められます。

ダーティーカーゴ、例えばボーキサイトやある種の鉄鉱石はホールド内の鋼製構造物からの少量の錆やペイントで汚染される可能性は低いものの、正確な洗浄度要求を確認しておくことが極めて重要です。

「ホスピタルクリーン」で通常定義されるクリーンカーゴ

「ホスピタルクリーン」水準の洗浄度とは、錆がない、浮き錆がない、浮きペイントがない、前荷の残滓がない、ということです。理想的には全ての鋼製物の表面や固定物が、区画内のタンクトップ底板を含めて、良好な全面的ペイントコーティングが施されているべきです。この厳格な洗浄度は、通常、クリーンカーゴを運搬する船舶だけが達成可能なものです。

 「グレインクリーン」水準の洗浄度とは?

「グレインクリーン」水準の洗浄度とは、ホールドを準備する際、一般的に最も頻繁に要求されるものです。傭船契約や航海指示書は、ホールドの準備を「・・・グレインクリーン水準に・・・」、もしくはより説明的に、例えば「・・・塩分がない、浮き錆がない、及び前荷の残滓がない・・・」、と表現することがあります。

米国農務省(USDA)は一つの定義を提示していますが、それが概ね、「グレインクリーン」水準に関する世界の平均的な要求と言えます(貯蔵検査業務のための連邦穀物検査業務指令書、第7章:適合水準):「貯蔵区域は次に定めるクリーンと考えられる適合水準に合致しなければならない:感染、齧歯(げっし)類、有害物質、異臭・・・のない乾燥した状態」

浮き錆とペイントスケール

「船倉区画には、一箇所で25平方フィートを超える浮き錆またはペイントスケール、もしくは、全体で100平方フィートを超える浮き錆またはペイントスケールがあってはならない。」「浮き錆は、拳で叩くと、またスクレーパーやナイフで端を下から軽く押し上げると、剥離する。」

もし貨物が人により消費される前に、加工を必要としないものである場合、これに続いて、「・・・船倉区画には、浮き錆やペイントスケールがあってはならない・・・」となります。

一般的に、固着した硬い錆は「グレインクリーン」水準で容認されています。

現実問題

海運業界で広く知られていることですが、世界の港湾や輸出業者の中には、「グレインクリーン」基準でも低・中水準として、若干の浮き錆やペイントスケールがあっても容認することもあるようです。

反対に、「グレインクリーン」基準でも、やや厳しい水準を要求する港湾や輸出業者があり、オーストラリアは「ゼロ・トレランス」水準を求める最も厳しい国の一つと言われています。

したがって、「グレインクリーン」というのは、明確な基準ではなく、一定の幅なり範囲の洗浄度を多様な貨物に対して示すものです。船長は、国やサーベイヤーが異なるとその解釈も異なることに留意する必要があります。ホールドクリーニングと保守作業に関する十分な記録を保持することで、カーゴクレームが発生した場合に、船主を援助し、また相当注意義務を尽くしたことを証明することができます。

Daniel Millet

Senior Master Mariner, Brookes Bell

Date2021/04/09