国際グループ(IG)による補償状(LOI)の標準書式は2010年に最後の見直しが行われました。(このLOIとはオリジナルB/Lの提示なしの貨物の引渡し、および/またはB/Lに記載されている港もしくは場所以外での貨物の引渡しと引き換えに差し出すものです)。リスクを伴うにもかかわらず、LOIは依然として広く利用されています。(また、一部の取引では、LOIと引き換えに貨物を引き渡すことがほぼ原則となっています)。最近の英国裁判所の多くの判決では、一部の当事者が契約上の義務を免れようとしているにもかかわらず、全面的にLOIの有効性が支持されています。
しかしながら、現在のLOIの文言を改訂せずそのままにしておくのは好ましくないため、近年、IGのワーキンググループは、用船者と船主の代表者やBIMCOにご協力いただき、文言の見直しを行ってまいりました。その結果、IGの各クラブは本日、本回覧に添付されている標準書式の改訂版を発表することになりました。文言の見直しに関する支援と助言をいただきました、英国商事裁判所を退官されたNigel Teare元判事に感謝を申し上げます。
以前のバージョンとは異なり、今回改訂された文言については、個々に変更点が検証され、その根拠を示す説明文が添えられています。本回覧にもこれらの説明文を添付しております。重要な点は、今回改訂された文言には、メンバーに注意喚起するために、該当する一定の状況で、LOIを受理した場合にはメンバーのP&Iカバーが損なわれること、また、クラブ理事会がその裁量により、適切であると判断した場合にのみ、その責任がてん補されることが目立つように記載されているということです。この標準書式の文言を使用することで、この立場が変わるものではありません。そこで、LOIを受理するメンバーの皆様には、LOIの発行者である相手方の財政状況を十分に確認していただくことを強くお勧めいたします。
この見直しは、電子船荷証券(e B/L)の見直しも行う IG の船荷証券委員会にて実施されました。見直し作業を行っている間に、 e B/Lへの関心も高まってきました。e B/Lを採用しているオペレーターによると、e B/Lを利用することで、LOIに依存する必要性が減少し、船主のコマーシャル・リスクが無くなり、用船者の潜在的賠償責任は、一部の企業では年間数億ドルを超えることもありますが、その責任に対する負担もかなり軽減されたと報告しています。
すべてのIGクラブはe B/Lの使用をサポートしており、e B/LシステムがIGに承認されている場合には、紙の船荷証券と同様の保険カバーが提供されます。現時点では、IGは10社のe B/Lのプラットフォームを承認しています。この数は、特に電子商取引の成長を反映する法制度が整備されるにつれて増加すると予想されます。英国では、2023年9月20日に2023年電子取引文書法(Electronic Trade Documents Act 2023)が施行される予定です。これは非常に重要な進展であり、これに基づいて英国法は、一定の基準を満たすことを条件に、e B/Lが紙の船荷証券と法的に同等であることを認めることになります。同法が施行されるまで現行のプラットフォームに存在していた法的欠陥を埋めるために使用しなければいけなかった複雑な契約上の取り決めの多くが不要となり、多くの大手運送事業者や荷主が取り組んでいるe B/Lの利用が急増する可能性が高まることでしょう。
しかし、それまでの間、LOIは必要であり、IGは今回改訂した文言によって紛争が起こる余地がさらに狭まるものと確信しています。