Risk Focus: 致命的な機器故障

Trulli

海難事故の多くは、故障や不具合が同時に発生すること、例えば海上輸送特有の環境と船内の重機が原因となって引き起こされています。海難事故は時に何らかの形での重大な機械の故障が関係しています。

機器故障の概要と要因

重大な海難事故は同時発生した複数の故障が連鎖しているものです。海運そのものや船上の高付加機器の特性から、これら海難事故は、多くの場合、何らかの形で致命的な機器故障が関係しています。

まず、基本的な定義に戻ってみると、機器とは、エネルギーを使用して目的の作業を遂行するために必要な複数の部品からなる手段と言えます。個々の機器の性能に影響する要因は、設計、製造品質、定期的な保守、使用者の使用方法、エネルギー源の質およびその作業環境があります。 

船舶管理会社は機器の保守と運用に責任を有します。ただし、その管理には限界があり、遠隔地で管理するだけで、船上の乗組員に必要な作業の遂行を任せることになります。船舶管理会社は船舶の管理に責任を有しますが、機器の設計や製造品質には支配力が及びませんので、この運航環境は永遠の課題となります。加えて、船舶の機関に使用する燃料は原油精製過程で最下位に属するもので、更なる負担が発生します。

船舶管理会社の役割を更に複雑にしているのは、マリンセクターにおける著しい技術革新により意思決定が陸上にシフトつつあることです。つまり機器やシステムは“電源を入れ動かす”、というブラックボックス化しており、船舶管理会社は急速に船舶と製造業者の仲介人になりつつあります。

新たな技術の導入と適切な乗組員の訓練はまた大きな懸念でもあります。多くの海難事故が船舶に導入された新しい技術の理解不足に起因して発生しています。例えば、紙ベースのチャートから電子ベースのチャートへ、伝統的なディーゼル機関から電気機関へと。シームレスな移行のためには、その変更を採用するための作業フレームワークを十分な余裕を持って、極めて慎重なアプローチを採用し、かつ各種のリスク評価ツールを活用して、策定することが不可欠です。 

致命的な機器故障:点と点をつなぐ(Catastrophic machinery failure: joining the dots)」に関するUK Clubのウェビナーをご覧ください。

さらなるリスクと軽減策

船舶管理会社の役割は、常に想定外の事象に対処することにありますが、このことは益々現実的になっています。このような状況下で、その膨大な不確実性に対処する唯一の方法は、十分に訓練された優秀なスタッフを配して、堅牢な手順および管理システムを有して、リスクを軽減することです。 

適切な乗組員を採用し確保するために要する投資すべき時間と資源は、長期的な船舶管理と致命的な故障の防止を支えるためには、不可欠なものとなります。海運業界では、乗組員の確保が、多くの場合、安全な船舶や運航のコスト効率性に連動すると考えています。最も重要なスタッフは乗組員の上位4名で、船舶管理会社の視覚器官であり聴覚器官であります。彼らは船舶管理会社のメッセージを受け、船内の全員に伝達する指導者です。乗組員の選定は、各船舶の特性を知らない乗組員派遣会社に丸投げしてはいけません。つまり、乗組員の選定には、船舶管理会社の関与が非常に重要になります。

船内の就労状況や就労態度に関しては、慎重かつ継続的な評価が実施される必要があります。透明性の高い明確な管理手順が不可欠です。UKクラブはメンバーに、無料で「CAE社で実施している人的要素の安全訓練 (human element safety training with CAE)」を提供しています。船舶毎に、とりわけ機器の保守システムと報告機能に関しては、戦略が必要です。これらの管理手順があまりに総論的であると、乗組員が自分勝手な方法と経験に従ってしまい、問題のある状況をつくります。

船舶管理会社がよく直面する問題として、新たな船舶が既存の船団に加わることです。通常、この受け入れた新船舶に関する情報が限定的で、その船舶管理会社が入念な受け入れ計画を立てない限り、問題や故障は発生します。堅牢なフィードバックシステム、データ、そして事故情報を異なる船舶もしくは船団の間で共有し、これらを重大な故障の未然防止に役立てる、これこそが優良な船舶管理の根幹となるものです。

安全な船舶運航管理にもう一つ基本的に重要なのは、それがまさに必要な時に使える状態の非常用機器を確保することです。非常用機器を確保することは、船内での故障状況を緩和して、その事故が致命的な故障に至らないようにするために不可欠です。したがって、それら非常用機器、更には防火や救命機器に関しても、定期的なチェック体制が必要になります。実用性のあるかつ現実的な訓練を船内で行うことにより、乗組員が想定外の事象に備え、また、船舶管理会社も多大な資源をこのために確保することが必要となります。

船舶管理の水準は、最低限の船級資格要件ないしは法定基準を満した骨格だけのものから、高度に品質管理された船舶管理会社が自由にその最高の船舶管理水準を求めるものまで、幅があります。船舶管理会社の予算に応じて、船舶管理の内容をどこまで追求するかは大きく、また特定の船舶もしくは船種を傭船する場合にも、異なります。 

船舶管理会社は、異なる造船会社による異なる品質基準、保守体制ならびに信頼性基準に基づいて、船舶を管理しなければならないという難しさにも直面しています。水準の高い船舶管理会社ではこの問題により良く対処するために、対象となる船舶の必要性に合わせて管理業務を形成したり、故障を防止するために追加的な手段を講じたりする柔軟性を持ち合わせています。低品質の船舶を取り扱う場合は別途予算が必要となる可能性があり、その場合は船主と合意すべく交渉することになるでしょう。 

以下のケース・タディーは、致命的な故障と船舶管理会社が直面する様々な問題を示しています。船舶管理会社の役割は重大です。その役割は、船主を満足させると同時に、船舶の安全性が危うい場合には責任を負わせる、その微妙なバランスを取ることです。使用している機器がコントロール不能の状況からだけでも、船舶を管理することが難しいのですが、同時に技術革新の影響が加わって、その業務自体が流動的な状態になります。有能で効率的な船舶管理会社なら、乗組員の活躍を妨げることなく、この困難で複合的な業務を全て遂行するのに長けていると同時に、船舶管理の高い水準を維持しながら、船内の一貫性の高い安全志向の手順を確立することができます。 

狭水道での主機関の低速回転による衝突事故

ある船舶が狭水道を航行中のことでした。水先人は乗船し、船橋に到着すると間もなく全速前進を指示しました。船長は機関室に速力を上げるよう要請しました。

次の30分間は全て順調でしたが、突然主機関の6番のシリンダージャケット付近からの大量の水が漏れていることが発見されました。機関室スッタフは6番区画の漏水を隔離する努力をしましたが上手くいかず、出口弁は閉鎖できません。大量の漏水と冷却水システムの圧力低下により、主機関の自動停止装置が作動しました。

船橋チームは、本船が接近する橋との衝突を回避するためのあらゆる選択肢を考えました。チームの努力は無駄で、貨物を積載している本船は針路を維持するのに十分な速力で進航できませんでした。数分後に大きな衝撃を伴う衝突事故を起こし、橋の中央の脚柱を粉砕しました。

6番区画からの漏水はシリンダーカバーないしはクーリンングジャケットから発生しているのが確認されました。このようなクラックは冷却水の保守が不十分な場合によく発生するものです。これらの場合は、ちりや金属粒子の、すなわち錆の堆積物がシステム内に検出されます。堆積物は循環冷却水に混入してシリンダーカバーとクーリンングジャケットの間隙に進入する傾向があります。これにより、シリンダーカバーの過熱が進行して、クーリングジャケットに多大なストレスが加わります。つまり、冷却水の保守が十分でないと、機関部品の腐食も相俟って、クーリンングジャケットにクラックを発生さることになります。

ある区画を直ちに隔離するために、バルブの良好な機能も重要です。また、燃料油や潤滑油と同様に、機関の冷却水は慎重に選別、処理、保守そして監視すべき重要な要素です。

機関室火災が海上での推進力喪失に至った事故

貨物積載中のある船舶が航行中、機関室は無人運転でしたが、大きな騒音が機関室から聞こえ、その後に火災警報が鳴り出しました。三等機関士が調べに向かったところ、機関室は黒煙で充満され、主機の2番シリンダー区画から炎が吹き出していました。

この三等機関士は船橋に報告して、機関を停止するよう要請しました。通常の緊急事態手順に従って、機関室から全乗組員が退出し、CO₂消火システムを作動させ、火災は鎮火しました。

この事故で、主機は大した損傷はしませんでしたが、制御システム、電気配線、およびパネル類は著しい熱損を受け、これにより推進力を喪失したために、高額な曳航料、さらに入渠して高額な修繕費を支払うことになりました。 

調査して判明したのは、燃料噴射弁を固定する2本のスレッド付きスタッドが、スレッドの根元で変形していたことです。この種の事故は珍しいことではなく、ナットが過剰に締め付けられるとスレッドが変形して、最終的には疲労破壊することがあります。 

正しいナットの締め付け方法として、計量トルクレンチを使い製造者の推薦するトルクでナットを締め付けることです。 

また、燃料噴射弁の固定方法には異なる設計があります。船舶によっては、スプリング付のスペーサーを使用しています:この場合、手動で締める限り、締め過ぎの可能性はありませんし;トルクレンチの必要もありません。

こちらをご覧ください:「Inside ship: 高温の表面を遮蔽する」(Watch  ‘Inside ship: shielding of hot surfaces’)

こちらをご覧ください:「致命的な火災:リチャード・ガンとのQ&A」(Watch ‘Catastrophic fires: phone-a-friend with Richard Gunn’)

主機関のベアリング損傷

あるバラ積み船は大豆を満載してブラジルから中国に向けて航行していました。  

出港の数日後、主機のオイルミスト検出器が警報を発して、主機を自動的に減速させました。機関を停止して、その後調査したところ、問題は発見されませんでした。機関長はこれを誤認警報と判断しました。主機は運転を再開し、本船は航海を続行しました。

翌日、大きな爆発音と金属打音が機関室から発生し、機関は停止しました。調査したところ、シリンダーの一つを支えていたクランクピンが損傷していました。このシリンダーを切り離して、残りのシリンダーで機関を使用する決定が下されました。

本船は南アフリカまで自力で航行した後、詳細な検査が行われて機関に更なる損傷があることが判明しました。損傷は主機の他の部分にも拡大していて、多くのベアリングに損傷が見られ、一部ではクランクピンにも及んでいました。 

長期間に亘る主機の修理を実施しました。予想されるカーゴクレームを最小限に抑えるため、貨物は別の船舶に移さなければなりませんでした。

燃料油中の触媒微粒子による主機関損傷

ある船舶が、ペルシャ湾から豪州東岸への積荷航海のために用船されました。  

触媒微粒子は、燃料の精油業者による触媒クラッキング過程で発生する触媒として使うアルミとシリコンの粒子です。触媒微粒子は、アルミとシリコンの複合体で、使用される触媒により、そのサイズや硬度が異なります。機関の製造会社では、一般的に、機関に使用する燃料は、最大許容量で15ppmの触媒微粒子とすることを推奨しています。この水準はISO基準(8217:20179)に定める水準を遥かに下回っていますが、適切な燃料油の処理・清浄装置を船内に確保して、触媒微粒子を15ppm未満に実質的に抑えることが肝要です。

本船は積荷港への航行の間に補油した燃料油を使用していました。燃料油の調査報告書は本船にありました。触媒微粒子は燃料油内ISO 8217:2017基準の定める数値内には収まっていましたが、それは54ppmと高いものでした。触媒微粒子は極めて硬質で、シリンダーライナー、ピストングローブやピストンリングの柔らかい金属表面に食い込むことがあり、それらを損傷することになります。その他の数値は全て基準値内に収まっていました。

本船はアラビア海で悪天候に遭遇しました。出港から5日後、排気ガスの温度とアンダーピストンの温度が、主機の2つの区画で上昇しました。主機は検査のため停止されました。この検査で、3番区画の全てのピストンリングが損傷していることが判明しました。その他の全ての区画でも、ピストンリンングに重度の摩耗が痕跡として見つかりました。  

本船はシンガポールへ迂回することになり、3番区画を切り離して低速で航行しました。シンガポールでは、造船会社の認定する保守業者が錨地に到着と同時に本船に乗り込んで、故障の調査と船内チームのサポートを行いました。

全てのライナー、ピストンおよびリングの状況を排気口からチェックしました。摩耗は、その度合は異なるものの、全ての区画で見つかりました。ピストンリングは多くの区画で損傷していました。また、多くのシリンダーライナーで、表面にクラックが見られました。

本船は修繕作業と燃料タンク洗浄のため数日間の停船を余儀なくされました。船主と傭船者の間では高額な争議へと進展し、補油計画、サンプル検査手順、燃料油保管方法および船内処理方法、で幾つかの明白な問題が提示されました。

UK クラブの「VPS社の燃料油データ:燃料油供給の入手可能性、品質および適合性 (VPS Bunker Data - availability, quality and compliance of bunker fuel supply)」に関する記事をご覧ください。

UK ディフェンス・クラブの「燃料油:品質及び品質クレームに関する手引 (Bunkers: A Guide to Quality and Quantity Claims)」に関する出版物をご覧ください。

船底外板の重大な腐食

ある船舶は竣工後、ドライドック延長プログラムにより、船底検査を続けて2回アフロート状態で実施されました。本船の船底コーティングはプライマーコーティングおよび防汚コーティングがなされていました。さらに、本船は加電圧陰極防腐(ICCP)システムが装備されていました。ICCPシステムは、船体腐食問題に対処する技術的に進歩した、また長期的な解決策であり、犠牲陽極システムに勝るものと見なされています。機関制御室に遠隔監視パネルが設置されて、ICCPの数値は本船の機関士によって定期的に監視され、また日次で記録されます。異常が発生した場合、直ちに調査されなければなりません。

本船は結局、7年後にドライドック入りして、ドライドックでの検査中に船底外板の板厚が計測されました。 

  • 船底外板に著しい腐食損傷が発見されました。  
  • 板厚計測によって25%を超える重大な厚みの減少が見られたのは、多くのキール部分、左舷の平面船底部分、およびビルジ半径部分でした。
  • それらの箇所における多くの溶接シームでは、深さ3.5mmを超える腐食による材質の欠損が見られました。

これらの発見により、船級要件として約120トンの船底外板鋼材の更新が必要となりました。入渠検査中に重大な腐食が発見されることは異常であるため、船主はそのICCPシステムの製造会社にICCPシステムの検査を依頼しました。この検査でICCPシステムが長期間に亘って正常に作動していなかったことが判明しました。

この船体の損傷により、莫大なキール交換のコストと、更なる3週間に亘るドライドック中の傭船料喪失につながりました。これにより、さまざまな関係者からのクレームも発生しました。

契約先(潜水士)の業務上過失で機関室へ浸水発生

船舶管理会社は、ある船舶が錨地で停泊中、右舷のシーチェストバルブの検査を含む船体のアンダーウオーター各部に係る保守作業を計画しました。検査の実施、及び機関室への海水浸水を阻止するという作業は、潜水専門業者が必要となります。本船側乗組員は、シーチェストバルブの蓋を取り外し、検査し、洗浄した後、元に戻す作業を行います。 

潜水士たちは本船において、マーキングブイを海水取入パイプ内で膨らませて海水の侵入を阻止し、バルブの蓋を外す準備をしました。本船乗組員は、リーダー潜水士の指示に従って、水圧が下がるのを待ちました。

しばらくして蓋が緩められ、乗組員がシーチェストバルブの蓋を取り外し始めました。その後間も無く、ブイが破裂して機関室へ急速に海水が侵入しました。 

潜水会社は、破裂したブイの替わりとなる緊急事態計画を持っていませんでした。従って、機関室は海水で満水状態になり始めました。乗組員はバルブカバーを取り替えようとしましたが、上手くいきませんでした。水位はやがて発電機の位置に達して、停電してブラックアウトになりました。船長は直ちに地域当局に通報して、緊急援助を要請しました。

タグボートの支援により、本船は造船所まで回航されました。恒久的な修理と入念な洗浄が入渠中に行われ、浸水の影響を受けた電動機の交換、電気制御パネルの修理、海水で損傷した多くの機器類の検査と交換を行いました。

ボイラーの火炎不良による乗組員の重傷

錨泊中の2日間に亘って、あるプロダクトタンカーのボイラーは確実な燃焼をしていませんでした。乗組員がバーナーユニットを分解・掃除して2回着火電極を調整しましたが、2回ともヒーターは着火しませんでした。

3日目に、二等機関士がその乗組員と復旧プランを協議し、彼らはバーナーユニットを開け、バーナーと着火電極を再度掃除しました。今回は、ボイラーが30分ほど作動しましたが、再び着火しなくなりました。電気技師が電気系統を再度検査しました。同時に三等機関士と五等機関士がバーナーとノズルユニットを分解・掃除して、二等機関士の監督のもと、ボイラーに再装着しました。試験着火を開始したとき、三等機関士、五等機関士そして電気技師の3名がボイラーバーナーの近くで自動作動と着火作動を監視していました。強制通風ファンが5分間排気プログラムで作動した後、着火電極がスパークした際に大規模な爆発が起こりました。

バーナー装置はこの爆発によって粉砕し、強制通風ファンからの配管も破裂しました。バーナーの上部を走っていた燃料ラインは変形して、若干の燃料が漏れ出しました。ボイラーの近くに立っていた機関士と電気技師は全身に重度の火傷を負いました。 

氷の漂着によるシーチェスト吸引力の低下  

あるコンテナ船が氷結する海域への航行をしていました。その準備として、機関部スタッフが氷結海域航海用チェックリストを完成させ、特に氷結を防止すると考えて下部シーチェストのスチームバルブを開放しました。

夜間、当直航海士は清水冷却システムの温度が上昇していることに気づきました。彼は二等機関士に連絡し、二等機関士はこの温度上昇は下部シーチェスト区画にできた氷の漂着に起因するものと判断しました。それでフォアピークのバラストタンクからの水を使って冷却水温度を下げる手配をしました。

氷を除去するために、機関部スタッフは海水ストレーナーが格納された区画のカバーを取り外しました。作業を進めると、海水ストレーナー区画から水が溢れ出ていることが分かりました。手動でバルブを締めようと試みましたが締められず、その後バールを使いましたが、バルブ調整機能が故障していました。静水圧によってバルブディスクとバルブ調整機能が上方に押し上げられて、海水が流入し機関室へ溢れ出しました。

海水ストレーナー区画のカバーを閉めることを何度か試みましたが、上手くいきませんでした。約10分後に、機関室の水は4メートルの深さになり、グレーティング・デッキの高さまで達しました。電気スパークが確認された後、船長は本船の電源を落とし、機関室から退避するよう指示しました。

その後間も無くして、乗組員はアッパー・デッキに召集されて、状況説明を受けました。非常用発電機が作動して通電され、乗組員は退船に備えました。投錨したにも関わらず、本船は漂流し座礁しました。船体は、亀裂が入り、穴が開き、また変形し、浸水した機関室の機器や電気部品類は、全て動きませんでした。

建造中の欠陥

船主は、新造のプラットフォーム型サプライ船の傭船契約を締結しました。その後間も無く、船主はベトナムのある造船所と本船の建造、引き渡しに関する新船建造契約を締結しました。本船機関の製造業者は、この新船建造契約のための下請会社の1つでした。 

やがて、船主は本船の受取を完了して、本船は傭船に出されました。

オフショアでの作業中、本船左舷側の主機関が、クランクシャフトとベアリングの広範囲な損傷により故障しました。直ちに、機関製造業者の担当者が呼び出され、造船所によって問題を調査する手配がなされました。その結果この故障は現場では解決できないので、主機を本船から取り外して、陸上の作業所で修理して、本船に戻す必要があるということが判明しました。故障の原因は、造船所による誤った配管レイアウトによるもので、これを機関製造業者が機関を調整した時点で発見できなかったものでした。 

この故障は、結局、傭船者が本船の長期傭船契約を解約することにつながりました。船主は、この解約には応じず、両者は長引く訴訟事件に巻き込まれました。

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  • Risk Focus - Catastrophic machinery failure 2 MB

    2021/03/22

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Ansuman Ghosh

Director of Risk Assessment

Date2021/03/15